金石範 メモ2

友からの手紙(1948年4月16日)の一節。

 

 八月十五日、あの日! われらの歓喜と感激はどのようなものだったか? あのような歴史的、いわゆる解放は、不幸にもとんでもないところへと逆行し、民生は有史以来の惨憺たる苦境に陥り、民族は最大の危機に苦しんでいるとは、悲運も悲運、あまりに悲運だ。今のわれらにとって解放があるとすれば、ただ言葉ばかりの解放があるだけの貧しいわれらだ。

 やつらに踏みにじられた汚れた足跡、いまだそそがれることのないやつらの毒牙に噛まれた血痕、いまだにずきずきと胸痛むこのときに、またもややつらの侵略の魔手が延びてくる! ああ! どんなに悔しいことか! これはどれほどの民族への侮辱であり、文化の圧迫であり、歴史の反動であることか? 言語と民族!  

 

われらは闘うのだ! そして打ち砕くのだ! 民族の生命であり、血であり、魂である言葉をうばわれたならば、民族も文化も国家もない。われらは在日同胞の闘争を応援し、激励するのはもちろん、日本政府に民族の名で厳重なる抗議をするだろう。