2024年9月22日、23日。 能登に芸能のひとときを運ぶ。 

9月22日 北国新聞 朝刊

 

 

 

 

 

 

◆9月22日 のと千里浜 道の駅

 

この日は本当は、<こぎつねも森>チームの芸能担当班として、珠洲市若山の正福寺に行く予定だった。

それはもう何カ月も前から現地とやり取りをして、救援物資を揃え、芸能の時間の仕込みもしっかりとやっての現地入りだった。

しかし、集中豪雨で山が崩れ、川が溢れ、若山周辺は危険との情報。

何度も能登に通い、道も珠洲の地理もよく知る数名が、珠洲に向かい、正福寺、周辺の仮設住宅の状況を見てくることになり、他のメンバーは待機。

そこで芸能チームは、待機の時間を利用して、のと千里浜 道の駅をちんどんで盛り上げようということに。もちろん、道の駅の許可をいただいて。

この日、道の駅ではキッチンカーも出て、大いににぎわう予定だったのに、豪雨の影響でそれも中止になったのだという。

 

道頓堀行進曲 さんぽ スモールワールド 鬼のパンツ ドレミの歌 UFO 等々、 とくに、小さな子らを喜ばすことに集中!

 

 

 

9月22日 午後 七尾 町の風景。

牡蠣の町 中島  川は泥川、水面は地上すれすれ。

 

七尾市内 少年スポーツ団 相撲大会

 

街なかには、いまも全壊、半壊の家が……。

 

 

 

 

買って帰りましたとも!

これは御祓(みそぎ)川。御祓の名の由来は、能登生国玉比古神社(気多本宮)が司祭した「夏越(なご)しの禊(みそぎ)」または「夏越しの大祓(おおはらい)」にあるという。豪雨の後の川は、今にも溢れそうな泥の川。

 

 

志賀町 スーパーロッキー

祭りグッズの充実ぶり。風土が見える。祭りが盛んな土地は、よく悪くもムラ共同体がしっかりと根付いている土地。東北の下からの復興が、(これはゼネコンが乗り込んでくる上からの復興を念頭に置いた「下」からの復興)、祭りを核に共同体の再生を図ろうとしたことが思い起こされる。しかし、今の能登にあるのは、祭りの担い手たちが土地を離れざるをえないような<放置>の状態……。

 

◆9月23日 珠洲・正院 仮設住宅集会所で歌の時間。

 

 

みんなでロックンロール体操!

 

怪しい山伏が、珠洲の民話「三右衛門(さんにょもん)話」を熱演中。

冬物の服。老眼鏡。自然派シャンプー・リンス・化粧水。身の回り品いろいろ。暮らしの必需品。

 

◆名前

ようこちゃん、わこちゃん、るみこちゃん、この仮設の集会所に集まったおばあちゃんたちの名前。                                 わこちゃんは、集会所前でのちんどんの調べに、身を躍らせて現れた。        わこちゃんは踊るのも歌うのも大好き。アコーディオンの伴奏で「青い山脈」と「りんごの唄」を熱唱した。隣と向かいのおばあちゃんの名前を教えてくれたのも、わこちゃん。

仮設住宅のなかの道を犬を連れて歩いていたおばあさんとその娘さんも、集会所に遊びに来てくれました。おばあさんは終始ニコニコしていた。そのおばあさんにも名前を聞いた。すると、おばあさんはこう言うではないか。

「カラッポです……私はカラッポんなんです、地震で家も何もかもなくして、カラッポなんです」

名前は言わない。ひたすら、カラッポなのだと繰り返す。カラッポ、カラッポ、カラッポ、カラッポ………。                              カラッポのおばあさんは、娘さん夫婦とその子供たち2人と犬と一緒に仮設住宅に暮らしている。せめて娘夫婦と暮らせることが幸せと言う。ただそれだけが。

もうひとり、名前を尋ねたおばあさんがいる。名乗らなかった。家を失くしたのに、歌なんてうたえない、と苛立った声で言った。それでも、歌の流れる集会所にしばらくの間、座っていた。みんな家を失くしたのよ、と隣に座っているおばあさんに言われても、黙っていた。やがて、ひとり集会所を出ていった。ひとりで。声もなく。