浪曲

江戸東京博物館ホールで浪曲を聴いてきた。
「甚五郎旅日記 掛川宿」玉川奈々福、曲師澤村豊子
「素麺を煮る内蔵助」澤順子、曲師佐藤貴美江
「佐倉義民伝」国本武春、曲師澤村豊子
等々。

お目当ては、玉川奈々福と曲師の澤村豊子師匠。豊子師匠の三味線の、柔らかいけれども芯のある、うわーっやられました降参です、としかいいようのない響きに本日も恍惚とする。
そして、奈々福。
「甚五郎旅日記」は今日で聴くのは4〜5回目のような気がするが、(その他、浪曲シンデレラとか、金魚とか、千人斬りの女とか、もうひとつの甚五郎モノとか、今までいろいろ聴かせていただいたが)、今まで聴いた中でサイコー! ほんの3ヶ月くらいの間に、奈々福は声の色を増やしていて、少なくとも7色にはなっていて、しかも鋭く削った声、野太く彫り上げた声、伸びやかに磨き上げた声と、声の質も幅を広げて、実に彩り豊か表情豊かに語って唸って歌っていた。すごいな、人間の喉は、人間の声は…。奈々福の精進ぶりに大いに刺激を受け、自分もまた多くの声を自由自在に繰り出せるようになりたいものだと心底思った。


小島信夫を読む。今さらだが、タダモノではない。この人の書いたものを読むと、世の中の文章の多くは条件反射的な感情や想像力の内側にちんまり収まっていることに今さらながら気づかされて、かなり背筋が寒くなる。
小島信夫の文章における余白の取り方、つかみどころのなさ、それでいて読む者をしっかりつかんで離さず、予測不能な地点へと引き回していくその引力が、素晴らしく良い。