もっと深く、痛く

東京・丸善4階のカフェでサウダージ・ブックスの浅野さんと会う。2003年から雑誌『風の旅人』に書きついできた記憶の旅の物語をいかに一冊の本にするかを話し合う。

3・11で何かが根本的に変わり、「記憶をつなぐ旅」から「空白をつなぐ旅」へと確かに移り変わった私の旅の、おわりとはじまりを刻むための一冊の本作り。


もうひとつ、気になっているのはチェチェンの旅の記録の原稿。
チェチェンの人々から託された問いを書き付けたその原稿を、きちんと一冊の本として、問いを世に送り出していかねばならないのだと、あらためて強く思う。それが彼らとの約束だから。

しばらく、チェチェンから遠ざかっていた旅の軌跡が、気がつけば、またチェチェンと接するところにいる。2004年にカザフスタンで出会ったチェチェン難民一家の出身地であるアルディ(ここでロシア軍は民間人を虐殺、略奪を行なった)のドキュメンタリーを明後日、ブックギャラリー ポポタムで観る。そして、私はしばらく仕舞い込んでいた2004年の旅の記憶を語る事になっている。その記憶は、いま、済州島4・3の記憶とも響きあって、もっと深く、痛く、私のもとにある。