百年の夜の歌 (2022年11月13日 百年芸能祭 絶賛参加 「百年かもめデラックス@凱風館」バージョン。オープニングアクト) 

百年の夜の歌 (サックス:仲野麻紀 ソリ:安聖民  朗読:姜信子)

     

                         横浜から歩いてきました 疲れきつたからだです

                              そんなに おどろかさないでください 

                              朝鮮人になつちまいたい 気がします

                                 (折口信夫「砂けぶりⅡ」より)

 

 

그토록  놀래지 마세요 (そんなに驚かさないでください)

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

 

深く暗い夜の道をあるいて 来ました。

疲れきつたからだです─。

もう百年もの間、歩きつづけてきました。

 

百年の夜の教えを、一つ。

みすぼらしい旅人が家の扉を叩いたなら、

けっして追い返してはならない、その名を問いただしてはならない。

 

見知らぬ旅人には 温かい食べ物と 柔らかい寝床を差し上げなさい、

旅人は草木の匂いをまとっていることもある、

ケモノの顔をしていることもある、

地を這う虫のようにやってくることもある。

旅人をおろそかにすれば、この世の闇は深くなる。

 

もしかしたら、その旅人は、タダモノではないよ。

 

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

 

百年の夜の教え、もう一つ。

人の体には八万四千の穴がある、その穴を目には見えぬモノたちが行きかっている、

人は 穴で あらゆるモノとつながり、命はモノで蠢いている。

そもそも人は穴なのである。

 

けっして穴を塞いではならない。

 

モノとはモノノケでもあります。

カミでもあります。

命そのものでもあるのだそうです。

 

モノを粗末にしたらバチが当たるよ。

 

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

 

思い出すのは百年前にこの世を襲った大地震

人びとは殺気立っていましたね、

この災いは、なにかの罪の報いではないかと怯えていましたね

そうかもしれないですね

この世では、いつの頃からか、旅人など追い払ってもよい、

使い捨ててもよい、殺してもよいということになっていた。

人びとはそれを文明開化と呼んでいましたね。

 

怯えは、たやすく、憎しみにすりかわる。

旅人を殺せ、どんどん殺せ、

やったぞ、バンザイ、もっとやれ、バンザイ

 

私も、男どもに取り囲まれ、竹槍を突きつけられました。

名を名乗れ、ガギグゲゴと言ってみろ、

男たちが叫びました。

彼らはよく知っているんです、

旅人は濁った音ではじまる言葉を話さないことを。

彼らはすっかり忘れてしまったんです

旅人は新しい歌をもたらす者だということを。

 

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

 

そんなに おどろかさないでください。

歌が消えてなくなりそうです。 

いのちがしぼんでしまいます

 

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

 

あれから百年たちました

この世はますます 素晴らしく怯えて 憎しみや悲しみが はびこっています。

でもね、この世はそもそも 生きとし生ける いのち はびこる 素敵な世界なんです

 

あなたの穴は蠢いていますか。

あなたのいのちは 歌っていますか?

旅人たちの足音が聞こえますか?

(トントントン)

さあ、あなたの扉を 開けてください

 

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요

그토록  놀래지 마세요……

 

 

旅人 その1 仲野麻紀!

 

旅人 その2 安聖民!

 

 

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