あなたは居なさい、ぼくは行く

書評を書く。
すばる4月号を眺める。
思いっきり甘酸っぱいあんかけカニ玉を作る。

宮内勝典「孤島語」を読む。
北米最後の野生インディアン《イシ》の話した淋しい孤島語。
《イシ》とはヤナ族の言葉で《人》の意らしいが、《イシ》と呼ばれた北米最後のインディアンは本名を明かさなかった。呪術的な世界観においては名前を明かすことは、己を危機にさらすことになるから。
《イシ》は発見されてからカリフォルニア大学付属の博物館に引き取られたという。
《イシ》はヤナ族の言葉で話す相手を持たなかったが、英語を習得することもなかったという。
good bye というところを、彼は、宮内勝典が推測するところでは、「you here i go」と言っていたらしい。

あなたは居なさい ぼくは行く。

ヤナ語では、「さようなら」をそのように言うのだそうだ。
《イシ》は発見されてから四年後に亡くなるが、その時も「あなたは居なさい ぼくは行く」と呟いたという。

アメリカ先住民は、大地を《亀の島》と呼ぶのだそうだ。

島、島、島、たくさんの孤島、わたしの島わたしの言葉、あなたの島あなたの言葉、ぼくの島ぼくの言葉、彼女の島彼女の言葉、彼の島彼の言葉、孤独の島孤島の言葉、
あなたは居なさい ぼくは行く