風吹く良き日

台風の一日。原稿を一本。原稿の合間に断続的に時間をかけて読み継いでいた『カンバセーション・ピース』(保坂和志)を読了。

「私というのは暫定的に世界を切り取るフレームみたいなもので、だから見るだけでなく見られることも取り込むし、二人で一緒に物や風景を見ればもう独りの視線も取り込む。言葉のやりとりでその視線を取り込むのではなく、視線を取り込むことが言葉の基盤となる」

保坂和志は、小説であり、小説論であり、一個の世界観であり、人間観であり、生命観であり、認識論でもあり、存在論でもあり、まわりまわってすべてを含みこんだ独自の「小説」を見事に書いたのだなとしみじみ感服。

見えるもの聞こえるものだけしか見ない聞かない人々の平板な世界にあることに疲れた時には、本を読む。本と対話する。