原点に帰る

2013年から2014年へ。

黒川創『国境 完全版』を読みながらの年を越しつつ、われら植民地人と文学とに思いをはせた。

黒川さんは西成彦さんのこんな言葉を引用している。
「いうまでもないことだが、われわれは誰しもがなにがしかの形で植民地人である。被征服民として植民地勢力に屈しながら生き延びているのか、入植者として征服者の権力保持に加担しているのか、輸入奴隷として新天地で繁殖をつづけているだけなのかの別は、われわれが植民地人であるという事実に比べたら、きわめて些細なことである。…(中略)…植民地文化がいかに多くの異人間の遭遇と対話の蓄積からなるものであるかをふりかえるために系譜学は存在する」(『森のゲリラ 宮沢賢治』より)。

いま一度、いうまでもないことなのに、ますますことさらに言わなくてはならなくなっている、大事なことを心に刻む。

元旦に読みはじめた今年最初の一冊はワシーリー・グロスマンの『万物は流転する』。
http://www.msz.co.jp/book/detail/07784.html

「清らかな人、堕落した人、疲れ果てた人、めげない人、誰もが希望という世界の中に生きていた。…希望は彼女を苦悩させたが、苦悩する時にも希望があればこそ息ができた」(第17章 シベリアの女性徒刑囚用ラーゲリで)。

希望があればこそ、息ができる。
今年こそ、ひそやかな息づかいにもじっと耳を澄まして、そのなかに潜む声を、歌を導きとする一年としたいと思う。

今年は去年よりももっともっと旅をしよう。
去年よりももっともっと出会って語り合って、もっともっと歌おう。