佐渡情話を人々は愛したけれども……

米若という浪曲師は、とにかくセリフ回しが下手だった、と語ってくれたのは曲師澤村豊子師匠。

豊子師匠曰く、
「米若師匠が佐渡情話を演じているとき、台詞部分になるとお客さんが聞いちゃられないやって、タバコを吸いに外に出ちゃうんだよ。で、節が始まると、おお、はじまったはじまったって、慌てて客席に戻ってくる。それくらい米若さんの節は魅力的だったねぇ。あれはちょっと素人さんには真似ができない。でも、それを真似したくて、浪曲学校でもたくさんの人がやりたがったね」

節の力。歌の力。