森崎和江 自意識 メモ

即自的な私はコスモポリティクな流亡の徒であって、定着する日本の共同体意識のどのランクにも入りこめない。強いていえば遊芸売笑の賤しさで民衆のエキスを伝播して歩く遊行女婦(うかれめ)グループの心情を伝承している。

 

大海にほうりすてられ、青天にあそぶ砂のひとつぶである。私は自己に忠実であろうとした。自己を律する鉄則を自己の内面に見る。そのようにして私は生存の原論理と歴史の必然とを拮抗させようとしてきた。のがれるすべはない。私がずいぶんまわり道してアジアを自分のなかにみたようなものだった。

(「非所有の所有」)