アドバイスをひとつ。

台風迫る一日。雨。
最近、11キロのハコちゃんを抱き上げてはぶんぶん振り回すせいか、ますます二の腕がたくましい。力こぶ。
7月中に必ず仕上げるべき原稿を、前倒しで前のめりで書き続けて、本日一段落。残りの10日は原稿あれこれ微修正。そして、月末に講師を務める「日本の次世代リーダー養成塾」の受講生(高校生160名)が事前に提出している課題文を読んでコメントを書く。しかし、160本、きついなぁ……。



原稿を書き上げた日には、久しぶりにゆっくりと読みたい本を読む。本日はジャネット・ウィンターソン『オレンジだけが果物じゃない』(訳:岸本佐知子 国書刊行会)。私はこの作家を、たぐいまれな物語の語り手だと思っている。言葉の宙の浮かせ方、飛ばし方、回し方、捻り方、つなぎ方、見事、見事、実に見事!


「わたしたちは物語を自分の望む形にこしらえる。物語とは、世界の謎を解き明かしながら、世界を謎のまま残す術、時のなかに封じ込めてしまうのではなく、生かしつづける術だ。一つの物語を百人が語れば、百通りの物語ができあがる」(P151)

「人は事実ではない物語と、事実である歴史とを区別したがる。何を信じて何を信じるべきではないのか、はっきりさせておきたいからだ。おかしなことだ。毎日、ヨナが鯨を呑み込んでいるいるというのに、どうして鯨がヨナを呑み込んだことを誰も信じようとしないのだろう?ほら、今こうしている間にも、人々は尾鰭だらけのうさん臭い話を、疑いもせずに呑み下している。なぜか? それが歴史だからだ」(P152)

「わたしは歴史の本を眺めるたびに、水気のしたたるこの世界を二枚の厚紙ではさみつけて、無理やり活字に押し込めてしまう、その強引な想像力に舌を巻く。…中略… 腐ったものを食べれば、自分も腐る。アドバイスをひとつ。総入れ歯になりたくないなら、サンドイッチは自分で作ること……」(P155)