小野十三郎 メモ

メモ。

詩に於てはリズム(情緒)の性質を変え得ない思想の力など存在しない。
詩に於ては、容易に情緒化されて一定の音数律(例えば三十一音字型というような)に乗り得るような思想は思想でもなんでもない。

言葉に新しい感覚と生命を与えること、これが詩人の仕事である。詩人はそのために民衆の言葉の中に絶えず宿っている短歌的リリシズムへの郷愁を断ち切らねばならない。かかる郷愁を断ち切ることが、現代の口語で詩を書くということの本当の意味であり、ここでリズムは批評だということを詩人は始めて言えるのだ。

定義の上で眠り込むな。

詩的現実とは、個々ばらばらの現実(実感)の中を貫いている一本の線の発見だ。



「旅と滞在」
旅をしても
長くとどまるな
用事をすましたらすぐ発て
早く帰ってこい
山も川も海も
みなおまえの敵だと思え
素朴な、人なつっこい村びとには特に警戒せよ
もし霧が立ちこめた漁港で
朝の魚市に出くわしたら
一瞥するだけで通り抜けよ