「石」という運命

火山島、石の島、済州島。この島で石にとりつかれて40年、石に狂って40年、という男に会った。

男は、溶岩が固まってできた玄武岩の、自然の造形の妙、石からあふれ出てくる生命力に突き動かされて、山へ、海へと、石の声にひたすら耳を澄ませて分け入っていき、お金も時間も持てる力もすべて石の収集に注ぎ込んできた。男の石にかける情熱に家族も翻弄されてきた。(今となっては、男は家族に心から感謝しつつも、家庭を顧みることがなかったことを申し訳なくも思っている)。男には、なぜ自分がそこまでやるのかがわからなかった。今では、「石」は運命であり、使命であり、これはきっと前世から決まっていたことなのだろうと考えている。

闇雲に石を収集したのではない。石を通して、済州島の神話、その根源にある精神を感じ取り、石によってその精神、その世界観を再構成していく。そこに男の情熱があった。済州島が今失いつつあるもの、人間が見失いつつあるものを、石によって再構成される世界の物語によって、再生させようという試みでもある。

「石の文化の公園」돌문화공원は、われわれが人間が失いつつあるものの気配で満ち満ちている。

済州島に行ったならば、「石の文化の公園」돌문화공원は必見。スタッフの解説を聞きながら展示を見ると、なおよし。

男と一日話していたのだが、古代への情熱 シュリーマンをふっと想い起こした。

「石の文化の公園」돌문화공원は今でも十分に度肝を抜かれる場所であるのだが、男が思い描いている世界観がすべて表現されて完成するのは2020年の予定だと言う。