「心安らかに居られる家郷を離れて、未知の地を久しく旅する者達は、一日の終る頃や夜の時間になると、限りなく魂の不安動揺するのを感じた。それを鎮めるための効果ある方法は、旅をする一行の者が共に静かな心、静かな言葉をもって、旅中の思いや風物を歌い鎮めることであった。


これを、
「旅の夜の鎮魂歌」
と、岡野弘彦が冒頭の解説に書く。意味深い言葉。


旅の夜の鎮魂歌。
旅中の一行の共同の呪的な祈りと歌の場。
まれびとと文学発生の場の光景の鮮やかなイメージのひとつ。