石牟礼道子

國分功一郎『中動態の世界』  メモ

なぜ「中動態」の本を読むのかと言えば、 「私」という「一人称」を森崎和江の問いがずっと、私の胸の奥深いところに刺さっているから。 妊娠出産をとおして思想的辺境を生きました。何よりもまず、一人称の不完全さと独善に苦しみました。(中略) ことばと…

石牟礼道子『草の道』メモ  求広大無辺之宝土候之上ハ火宅之住所不令望候(原城からの矢文)

もう30年も前のことになるのか。 石牟礼道子さんの天草探訪の旅に1度だけお供したことがある。 原城跡を訪ね、鈴木神社にも伺った。 当時はこの度が『春の城(アニマの鳥)』に結実するとはまったく知らなかった。 私にとっては初めての天草の旅だった。 『…

石牟礼道子『アニマの鳥』メモ2  しもじもの声

第5章 菜種雲 おうめ。 あたいの仕込む酒はな、甕の中で、ナマンダブ、ナマンダブちゅうて泡の立つとぞ。お念仏唱えん者には、呑ません 。 顔を見たこともない殿さまや、代官所の役人たちがどのくらいの人間だか知らぬが、わが身を使って働いたことのない者…

石牟礼道子『アニマの鳥』メモ1 四郎の言葉集

四郎の言葉を石牟礼道子の言葉として聞く。 第三章 丘の上の樹 P100 四郎「数というものを追うてゆけば、前にも後ろにも限りがなく、ついには虚空となり申す」 p102 四郎「人を売り買いする船のカピタンも水夫も、みな南蛮経を読む人びとであるのを想います…

渡辺京二による石牟礼道子 「彼女の文学は庶民文学ではないのです」 

自分たちの世界に向けられた近代知識人のまなざしを否定して、逆に自分たちの生活世界から近代の正体を明らかにしてゆくところに石牟礼文学の本質があると申しましたが、その際彼女は決して被抑圧者としての民の利害や言い分を代表するという方向をとってお…