去年の今頃は、遠野や陸前高田や津軽や恐山あたりをうろうろしていたのである。
そのとき買い込んでパラパラとしてしか見ていなかった「オシラ神の発見」をしっかりと読み直した。
オシラ神の祭主・祀り手は誰か? についての概略が書かれていて、これがいろいろと今考えていることの参考になる。
★東北地方北部:
伝統的な口寄せ巫女の「オシラ神」祭祀への関与はあるが、巫女は「オシラ神」を所持しない。
★東北地方南部:
口寄せ巫女が「オシラ神」を所持・信仰することもなく、祭祀への関与もない。
代わって、口寄せをしないシンメイ巫女が「オシラ神」に深く関わる。
★東北地方中部:
伝統的な口寄せ巫女が「オシラ神」祭祀に関わり、なおかつ自身も「オシラ神」を信仰して所持する場合と、
信仰するえに自らの巫儀のために所持する場合とがある。
★ 伝統的口寄せ巫女のほかのに、法印、太夫、別当といった「民間宗教職能者」との関わりもある。
たとえば法印と呼ばれる里修験は、オシンメイサマ(オシラ神の福島あたりの呼称)を祠に祀り、「オシンメイサマに踏んでもらうとよい」といって治療儀礼をしたり、尺童にオシンメイサマを憑依させて神おろしをしたりするという。
★ そのほか、旧家などで代々伝えられてきた「家の神」としての「オシラ神」もある。
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巫女がオシラサマを手にもって遊ばせながら唱える「オシラ祭文」もまた興味深い。
内容は地域によって大きく3つに分かれるという。
1.茨城県の蚕影神社縁起系の物語
異国の王女・金色姫が継母に憎まれて、桑の木のうつぼ舟で海に流され、常陸に漂着。地元の夫婦に助けられるが亡くなり、その遺体から蚕が生まれた。
2.下総の松虫寺縁起系の物語
聖武天皇の皇女の松虫姫が継母に憎まれ、業病で亡くなり、その遺体から蚕が生まれた。
3.中国の『捜神記』系の物語
ある大官の娘が、飼い馬に向かって、出征した父を連れて帰ってきたら嫁になると約束し、娘を恋い慕う馬は無事大官を連れ帰る。しかし、約束を知った大官は怒って馬を殺して皮をはぐ。すると娘は馬の皮に包まれて昇天し、後に蚕となって現れる。
★東北地方では『捜神記』系の物語が多い。
※ 1と2の物語はうつぼ舟に乗せられて海に流される説経『小栗判官』の照手姫や、継母に憎まれ業病となる説経『信徳丸』のことを想い起こさせる。うつぼ舟と蚕ということでは、秦河勝の伝説も想起させる。おもしろい、実に面白い。