2008年「第一回東アジア文学フォーラム」発表原稿より。
民主主義、人権、自由、平等などは今やあまりにもよく口にのぼる。色あせた旗のように見えるが、今日的意義を失ったわけではない。お互いの状況はそれぞれ異なるが、作家である私たちは、まず国家主義や民族主義から自由になる必要があることを強調したい。
私自身は地上のどこにも故郷をもたないが、ただ母国語で文章を書く作家だという点だけは忘れまいと思う。
『パリデギ』原著 巻末インタビューより。
私は北朝鮮の難民を新自由主義の負の部分とみており、程度の差こそあれ、周辺部地域では餓死寸前の惨状が見られます。事実、戦争が続くアフリカでは動植物の種が滅亡するように、人間も種族単位で消されています。世界は激化する混乱の渦中にあるにもかかわらず、私たちはいつも西欧社会のうわべばかりを眺め、その尺度で自らを計り、それに自らを合わせようとしています。世界が共有する“文芸思潮”などないのです。自らと朝鮮半島の現在の生を、世界の人々と共有しようとすることこそ、作家としての私が国境や国籍に縛られない”世界市民”になる道なのです。