車谷長吉の小説『赤目四十八滝心中未遂』を読んでから、いつかこの滝に来てみたいと思っていた。
もう小説の内容も忘れ果てたいまになって、室生寺の十一面観音を観に来て振られて(宝物館落成記念式典まで十一面観音は奥に仕舞い込まれていて拝観できなかった)、
がっかりして室生周辺の地図を眺めやっていたら、赤目四十八滝という文字が目に飛び込んできた。こうなったら行くしかない。
小説を読んだ頃からもう20年。その間、私は、気がつけば、「水」に惹かれる、山中の水音に心が震える、命が洗われる、そんな心持ちで折に触れて滝を訪ねるようなことをするようにもなっていた。山中の水音が無条件に私を呼ぶ。
やってきて初めて知ったこと。
この四十八滝は曼荼羅なのだということ。
ここは役行者ゆかりの地であり、滝の一つ一つが、不動明王であり、大日如来であり、千手観音であり、途中には弘法大師を祀る護摩堂があり、つまりはここは行者たちが真言を唱えながら、お沢駆けをしただろう場所であること。
そして、行者たちは忍者ともなるわけで、(言わずと知れた伊賀忍者)、赤目四十八滝は忍者の里としても売出し中。
そもそも、室生寺の十一面観音を拝観したかったのは、それが水の神だから。
伊勢から大和への水脈(室生寺―長谷寺―聖林寺/大神神社の元神宮寺―東大寺)をたどる旅の手はじめにまずは室生寺と思ったのだった。
赤目に行く道は、伊勢へと向かって走る鉄路がある。ああ、この道が伊勢に、と思いつつ滝を目指したのだった。
<霊蛇滝>
<不動滝>
<乙女滝>
<護摩堂 遠景>
<千手滝> 今日は時間切れでここまで。全行程のまだ半分。
この音が聴きたかった。