文学
古井由吉『野川』。受け取りそこねた沈黙がある。その沈黙に耳を澄ます。そこに聞き取る何かは、この世のものではない何かのようである。それを聴く自分自身もこの世のものではないようである。「わたしは一滴の水となった。滴となり大海に失われた。わたし…
古井由吉の作品集『聖耳』を読んでいる。延喜帝が深夜、京の端で泣く女の声を聴き取り、今すぐその声の主を尋ねよと蔵人に厳命して、探し出させた逸話を表題作「聖耳」の中に古井由吉は書き込んでいる。。 それは声にまつわる空恐ろしい語り。「一里の道を渡…
年の初めから、詩人谺雄二の声を千年先まで飛ばそうと、谺さんに会いに、本を作りに草津の栗生楽泉園に通った。5月11日に谺さんが逝ってしまう前に、本は滑り込みで間に合った。谺さんの「いのちの証」。『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』(みすず…
「殺したい、という欲望を、わたしは一生もち続けている。はっきり言う。わたしがもち続けているもののなかでも、最ももち続けているのはそれだ」(『アルテルナティヴ・テアトラル』誌より)「物事を学んだとたんに、あるいはそれらを見たとたんに、早くも…