2011-01-01から1年間の記事一覧

風吹く良き日

台風の一日。原稿を一本。原稿の合間に断続的に時間をかけて読み継いでいた『カンバセーション・ピース』(保坂和志)を読了。「私というのは暫定的に世界を切り取るフレームみたいなもので、だから見るだけでなく見られることも取り込むし、二人で一緒に物…

明日の時の長さは?

テオ・アンゲロプロス『永遠と一日』を独り観る静かな夕べ。束の間、通り雨。「明日の時の長さは?」 「永遠と一日」『永遠と一日』。舞台はギリシアの港町テッサロニキ。詩人の最後の一日。その一日は、思いがけず一日を共に過ごすことになるアルバニア系ギ…

自分を驚かす。

11月刊行の2冊の本の初校ゲラがほぼ同時に届き、どちらも今週末までに戻さねばならぬというタイトなスケジュールで、ゲラを見つめすぎて、目が寄り目になって元に戻らない。と、言いつつも、本日はハコちゃんの一歳の誕生日で、思わず買い物に出て、思わ…

やっぱり、ここがいい

陸前高田の高田保育所の園長先生から、写真集『未来へ伝えたい 陸前高田』が届いた。 「想い出の陸前高田」「2011.3.11」「津波の爪痕」「被災前・被災後の姿」が市民の寄せた写真で構成されている。私は被災後の陸前高田しか知らない。被災前の失…

東京でも、チェチェンの集い

集中講義3日目。へとへとクタクタです。さて、お知らせ。 - チェチェンを忘れないで──裁かれない人権侵害──『アルディ−時効はない』上映とトークの集い日時:10月9日(日) 14時−16時30分(13時30分開場)会場:明治大学リバティータワー6階 1065教室交通:JR中…

熊本週間

昨日から熊本。まずはチェチェン写真展の会場である新市街・カフェオレンジへ。店主(魔女ともいう)のヒサコさん、展示準備の一切を引き受けてくれたカメラマンしもちゃんに会う。 カフェオレンジの隣には、やはり魔女がオーナーで、魔女の好みの本しか置か…

土の匂い

11月刊行予定の、ハンセン病にまつわる本の「あとがき」をようやく書いた。ぎりぎりすべりこみセーフで夏休みの宿題を終えたような気分。書かなければいけないときにかぎって、無闇に本を読みたくなる。書店で手にとって、どうしても家に持ち帰りたくなった…

報告

宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」をあらためてきちんと読む。賢治の童話は小学生の時にたいていは読んだのだが、なぜか、「グスコーブドリ」だけはどこでどうつまづいたのか、ちっとも読み進められなくて、途中で投げ出して、以来、読もうともしなかった。…

雑草、かぼちゃ、ひまわり

陸前高田。午前中は雨。午後から、米崎町の海辺の、津波に洗い流された田んぼ跡で、見事に生い茂った雑草の、草刈の作業をした。生まれて初めて鎌を手に、私の胸元くらいまで茂っている草どもをがりがりと刈っていく。ここは田んぼだったはずなんだけど、流…

達谷窟―たっこくのいわや―

不意に思い立って、平泉に立ち寄ってから、陸前高田に入ろうと思ったのだが、一関、平泉、水沢、北上、花巻、いずれも宿が取れず、仙台を拠点に動くことに……。 赤坂憲雄が言うところの「蝦夷の東北」を垣間見たいと思っていた。平泉から一関に向けて車を走ら…

なぜ?

陸前高田の松の行方を思うと、腹立たしさより、この社会の行く末がひどく恐ろしいものに思えてきて、不安になる。専門家が焼いたところでなんら問題はないと言っている松の薪を、どうして抗議の声の大きさだけを判断の材料にして、焼かないという結論を出す…

本、本、本

今さらながら辺見庸『赤い橋の下のぬるい水』を読む。すごいな、やっぱり、辺見さんは。言葉が体の芯からにじみ出てくる者だけが持つ凄み。保坂和志『カンバセイション・ピース』も今さらながら読もうと古本屋で購入。『ツナミの小形而上学』(ジャン・ピエ…

休日

久しぶりに仕事を忘れ、汽車に乗りに水上に出かける休日。C6120のペーパークラフトが車内で配られ、しっかり持ち帰る。なかなかに嬉しい。次は、ずっと乗ろう乗ろうと元学生ヨツバと言い合って、まだ乗れずにいるくるり線に行こうか。

書く。

7月下旬から8月第1週にかけての、過酷な原稿読みの日々がようやく終了。この期間にトータル370本の高校生・大学生の書いた文章を読んだ。自分が文章を書き始めた頃を想い起こしつつ、この中から本気で書き続ける者が何人でてくるのだろうと思いつつ、…

最後の授業

明日より4日間、恵泉女学園大学にて文芸創作集中講義(別名文芸創作SM教室)。一身上の都合で、今回をもって恵泉での講義は最後となる。いつものように、物好きな卒業生たちも講義を受けに(=遊びに)来るらしい。来れば、単位も何も関係なく書かされて、…

傾聴

東京大学アイソトープ総合センター・児玉氏の参考人陳述。放射能汚染の実態。その危険。国会の無策。 この声は日本に生きる誰もが聞くべき声。http://www.youtube.com/watch?v=DcDs4woeplI

天罰

この3日間で高校生作文を100本読んだ。あと30本残っている。妙なのは、書き手は165人いるはずなのに、言葉遣いこそ違うものの、内容を支えている価値観はほとんど大差ないこと。全国の互いに面識もない高校生同士が、どうしたら頭のつくりがここまで似るか…

いつかチェチェンで会いましょう。イベントご案内

〜チェチェン「写真展」と「上映会」in 熊本のお知らせ〜 ◇ 写真展『旅人は見た−チェチェン戦争の歴史とふつうの人々の暮らし』 2011年9月4日(日)〜11日(日) 会場:「Orange café」(2F) 熊本市新市街6-22(POOLS COURT通り)、Tel:096-355-1…

アドバイスをひとつ。

台風迫る一日。雨。 最近、11キロのハコちゃんを抱き上げてはぶんぶん振り回すせいか、ますます二の腕がたくましい。力こぶ。 7月中に必ず仕上げるべき原稿を、前倒しで前のめりで書き続けて、本日一段落。残りの10日は原稿あれこれ微修正。そして、月…

メモ 『オイディプス王』

『オイディプス王』を読む。オイディプス:テレイシアス、言葉に語りうるもの、語りえないもの、天の不思議、地の神秘、すべてを洞察してやまぬ予言者よ、たとえその目はみえずとも、国がいまどのような災厄に襲われているかは、おんみの心にはよくわかって…

「空白」を書く

一昨日、7月10日は、軽井沢で友人の結婚式だった。一番幸せで一番美しい瞬間に立ち会うことの幸せ。そうして、横浜に帰って現実に立ち戻れば、原稿書きの日々。8月から新潟日報ではじまる連載の原稿をああでもないこうでもないと唸りながら書く。テーマは「…

星に手を合わせる。

昨夜、陸前高田の知人からメール。 「今日は七夕。星は見えませんが津波で亡くなった人の星に手をあわせました」これは、7月6日夜、陸前高田の「奇跡の一本松」の上にかかった天の川。朝日新聞より。

公民館で大掃除

7月2日(土)、朝から陸前高田へ。 災害ボランティアセンターに行き、作業のマッチング。田んぼの用水路の瓦礫撤去といったハードな作業はできそうにないので、高田町の大石公民館のお掃除ボランティアへ。この公民館あたりでは、気仙川から来た津波と、海…

ふたたび多動

明日より二日間、花巻、遠野、陸前高田と走りぬける。赤坂憲雄の『東北学 忘れられた東北』をリュックにしのばせて。

多動の日々。

6月23日大阪・鶴橋界隈を歩き、詩人金時鐘さんと会い、ささやかな宴。 24日大分・湯布院に飛び、「ゆふいん文化・記録映画祭」に参加。 http://movie.geocities.jp/nocyufuin/home.html オープニングは松川八州雄監督『映像叙事詩 みちのおく』。これは…

水のなかから水のなかへ

発熱して保育園に行けなかったハコちゃんを、私が保育園代わりになって一緒に過ごす一日。 「ハコちゃん!」と呼びかければ、声に出して返事こそしないものの、「ハイッ!」というように勢いよく手を挙げるようになった。これは昨夜から。日々の成長。まだ、…

刻みつける

24日から始まる「ゆふいん文化・記録映画祭」の第4回松川賞受賞4作品を観る。25日に、審査員として、この4本の中から一本、選ばなくてはならない。 「刻みつけることは記録することではない。記憶ですらないかもしれない。刻みつけるというのは、この世界に…

東北から戻ってきて一週間

6月14日に陸前高田市を訪ねた。 朝から一日、ボランティアで、広田町の水道工事の会社の倉庫で、泥と瓦礫のなかから拾い集められてきた水道管や蛇口やネジを洗い続けた。 気仙町、高田町、海から町の背後の山まで真ったいらな土地に広がる市街地がすべて…

距離に立ち向かう

『ユダヤ人大虐殺の証人ヤン・カルスキ』(河出書房新社 ヤニック・エネル著)を読む。ヤン・カルスキは実在の人物。ポーランド人のレジスタンス運動家。ヤン・カルスキというのっはコードネームで、実名はヤン・コジェレフスキ。しかし、彼はコードネームで…

何を聞いているのかな、私の耳は。

ヴラジミール: 何を言っているのかな、あの声たちは? エストラゴン: 自分の一生を話している。 ヴラジミール: 生きたというだけじゃ満足できない。 エストラゴン: 生きたってことをしゃべらなければ。 ヴラジミール: 死んだだけじゃ足りない。 エスト…