2010-01-01から1年間の記事一覧

顎のある人生、ない人生

済州島の海辺の村、ウォルリョン里に、木綿布ハルモニが下顎を銃弾で吹き飛ばされてから、亡くなるまで、60年近い歳月を過ごした家を訪ねた。4畳半2間の家。締め切られていた家の中に入った瞬間にモワッとした空気に包まれる。遺影にお線香をあげようとし…

落穂拾い

済州島の中山間の村では1980年代半ばまで、トイレは外、しゃがみこむその下には豚。どの家にも豚がいた。トイレの現代化(!)は、済州島で何かの全国大会があった時に、このような原始的なものを見せてはならないという行政の方針で推進されたという。文民…

あれもこれも・・・

済州市内からバスに乗って、モスルポへ。ここを起点にチェジュオルレ(オルレは済州島方言で小道)の第10番コースをゆく。チェジュオルレは、散策コースとして設定されている。道のところどころ、木々にオルレの目印としてつけられている赤と青のリボンを辿…

クッ 굿

済州島の巫俗の研究者姜昭全さんの好意で、彼女が懇意にしている神房(=巫堂 ムーダン)が執り行うクッを今日一日、朝から晩まで観てきた。一週間行なわれるクッの、今日が3日目。本日はまず午前中に「三公本縁譚」(前世についての由来と、その解決の過程…

運命、もしくは諦念という名の「記憶」

8月18日に済州島に入って、この二日間であまりに多くの人に出会い、多くの話を聞き、すでに頭の中は混沌の渦。4・3事件の記憶(なかでも語られることのない記憶)、その背景にある済州島の歴史・文化・風俗を知りたいという旅人に、出会う人すべてが全…

済州島には船で行く。

かつて戦前には、済州島⇔大阪航路があった。君が代丸という船が通っていた。島と大阪はダイレクトにつながっていた。戦後、船は通わなくなっても、島と大阪を結ぶ闇の航路は存在し続けた。 1948年、済州島であがった、南北分断へと突き進む南側の単独選…

済州島行き目前

引き続き、厳しい一週間。学生たちの文章にコメントをつける。雑誌「風の旅人」の原稿20枚を書く。『あなたたちの天国』の訳者あとがき36枚を書く。間をぬって、俳句を詠もうとして詠めずにただただ唸る。(初めて句会に参加した)。来月出産予定の娘の様子…

一週間

佐賀・福岡の旅から戻ってくるなり、月曜からは過酷な一週間でした……。 週半ばには三十八度の熱まで出して、それでも、5日間で15コマをこなす文芸創作集中講義をようやく終えて、土・日と寸暇を惜しんで寝て、(それでも合間にお尻に火のついた状態の原稿を…

可能性の扉を叩く

金、土と佐賀で、次世代リーダー養成塾の高校生180名を相手に「物語」について語り、「表現」においてテクニック以前の一番大事なことを伝えようと、浪曲乙女玉川奈々福と二人、大いに奮闘した。具体的には、高校生たちに、まずは尊敬する先人をひとりを選ん…

8月1日 福岡で

こんなんあります。↓ 私も浪曲乙女玉川奈々福と一緒に行きます。 お近くの方、是非のお越しを!

故郷を持たぬ言葉のために

慌しい一週間。その締めくくりは、本日、渋谷にて、親しい友人が集まっての、再出発会。それぞれに転機を迎えている30代、40代女子の、明日に向けての壮行会。がんばろうねぇ、みんな。訳稿見直しの合間の読書の友は、『「在日」と50年代文化運動 幻の詩…

また、原点

神保町の在日韓国YMCAで二時間あまり語ってきた。家にカンヅメで仕事をしていて、声を発することがほとんどない、(声の出し方を忘れている)その合間に、いきなり沢山の人の前で話すというのは、なかなかチャレンジングなこと…。新宿職安通りから西表島…

熊本放送で「流転〜追放の高麗人と日本のメロディー〜」が放映されたのは、確か2004年だったか……。その前年2003年にロストフ・ナ・ドヌまで、高麗人、チェチェン人、メスへティア・トルコ人等々、旧ソ連を漂流する人々を訪ねて、テレビクルーとともに旅をし…

沁みる

新聞連載原稿6回分のうち、4回分までを集中して書く。思考も視界も寄り目になってきた。「七つめの絵の具」(いせひでこ 平凡社)を読んで、寄り目をゆるめる。絵描きの絵のない本と著者は言うけれど、この本には絵がいっぱい。読むほどに心に描かれる絵。乾…

備忘録

自分が何者なのかという問い、ひどく切実な問い。 それは、必ずしも自分のなかから生まれいずるものではなく、私に「何者かであってほしい」と求める、もしくは命じる、誰かから、つまりは私の外部から、ひそかに忍び込んでくる問いでもあるのだろう。 韓龍…

声を聴く日

午後、葉山のサウダージ・ブックスへ、群島詩人の声を聞きに。(と、言いつつ、その前段のル・クレジオをめぐるさまざまな話を今福龍太氏が語ったところまでで、私はタイムアウト、後ろ髪をひかれる思いで、新宿へと向かったのだが……)。久しぶりに海を眺め…

うれし、たのし。

久しぶりに多摩センターに行き、大学の文芸創作の学生たちと作品集作りのための編集会議。編集部員一同、実に熱心で、実に嬉しい。自分達の作品をいかにして未知の読者に届けるか、未知の読者といかに対話するか、その部分を一生懸命考える姿を見ているだけ…

感謝

結婚するわが娘へと、石垣島の水牛老師から、旅立ちへの祈りを込めた歌が届く。嘉利吉ぬ綾船に嘉利吉ゆ載して 一路平安ちゃあ嘉利吉 深く感謝。 結婚式に集ってくださった皆様、お祝いのメッセージをくださった皆様、今まで娘を見守ってきださった皆様、すべ…

出発

今日、明日と大阪。明日は娘の結婚式。 素晴らしく早かった、娘が生まれてからの、この24年間。彼女は、私の出発点になった『ごく普通の在日韓国人』とほぼ同時期に生まれた。そして、あの時の私と同じ歳で結婚して、新しい人生に出発してゆく。 期せずして…

耳を澄ませて

「アルフレッド・アルテアーガ+高良勉 詩選」(サウダージ・ブックス)を読む。群島詩人の見えざる共鳴体と、「アルフレッド・アルテアーガ+高良勉 詩選」の編者今福龍太氏は言う。見えざる共鳴体。それは、じっと耳を澄ませば、この世の島々のここでも、…

手持ち無沙汰

全420ページ訳了。とはいっても、とりあえず第一稿。これを敲く。予定では9月刊。みすず書房。 いきなりの手持ちぶさたに、魯迅「阿Q」を読む。俳号を考える。

さあ、一寝入

あと10ページ。今日は一歩も外に出ていない。明日は外に出ないと食べ物がない。ともかくも、棚上げした問題はありつつも、あと10ページ。長旅ももうすぐ終わる。(いやいや、終るまいよ、旅は次から次へと島伝いにつらなっていくものだから)。島の詩人…

「あなたたちの天国」

翻訳カウントダウン。あと30ページ。結末に向けて、登場人物たちがここぞとばかりに、いよいよ激しく問いや思いや感情を吐露するものだから、精神的にくたくたボロボロにされる。物語の舞台は、植民地時代にハンセン病者の楽土を目指して作られた韓国・小…

振り子

ここ数日の話。 月曜日。24年ぶりに大学の同級生に会う。ある雑誌のインタビューを受けたのだが、そのインタビュアーが同級生だった。彼は弁護士で、その雑誌の編集委員をしている。私の知らない、大学生の頃の私のことを、彼は思い出として語り、彼の中の私…

他人の言葉

こどもの頃からよく見る夢。寝ている部屋がそのまま夢に出てきて、自分が寝ているのか目覚めているのか、よくわからなくなる、夢うつつ。ともかくも、その夢の中の自分の部屋にいると、いろんな人が訪ねてくる。訪ねてくる人は、夢ごとに違う。ただ、どうも…

欲張り

金井美恵子『快適生活研究』、ラングストン・ヒューズ詩集、小野十三郎詩集を眺める。ラングストン・ヒューズを読んでいると、心が揺れたり、騒いだり、静まり返ったり……。 - 「黒人はおおくの河のことを語る」 ぼくは、おおくの河を知っている。ぼくは、お…

学び

一日翻訳。第2部まで訳了。ここまでが344ページ。ようやく残り80ページ(第3部)まで辿り着いた。ここまで物語は波乱万丈。本日訳した第3部のラスト10ページは、内容が強烈で、心を鷲掴みにされて振り回されて、精神的にかなり疲れた…。訳者として自信…

あっという間

瞬く間に横浜に帰ってきた。帰ってくるなり、済州島がらみのいろいろで、メールを書いたり、呼び出し受けたり、済州島に電話をしたり。何かが私のまわりで渦巻いているような。島伝いに、いったい、どこまで、行くのだろ。行ってしまって、振り返ってみてみ…

お願い

弟夫婦と夕食。義妹は伊江島出身で、鳩山と民主に怒ること、怒ること。公約信じて期待を込めて前回選挙で投じた票を返してほしいと穏やかに激怒。(性格が実に穏やかなので…)。今日、明日と熊本。合志市主催のハンセン病がらみの講演会の講師をする。久しぶ…

さりげない哀しみと…

さてさて、昨日6月1日は父の命日で、本日2日は私の誕生日。感慨がないこともない。正岡子規『病床六尺』を今さらながら読む。死の三日前まで書き続けられた日々の記録。確実に刻一刻と迫り来る目前の死に向かいつつ、でも日々生きているんだよなぁと、本の中…