2010-01-01から1年間の記事一覧

不覚をとる

東銀座シネパトスで「ここに泉あり」を観てきた。戦後すぐに群馬県の高崎に生まれた市民オーケストラが、人々に美しい音楽の音色を届けようと、何度も解散の危機に見舞われながら、幾多の苦難を乗り越えていくという物語。実話をベースに今井正監督、主演岸…

文学は…

日曜日は恵比寿で秋田から東京に越してきた友人の歓迎会、月曜日は自由が丘で中学生相手に与太話、火曜日は渋谷で現代詩を読む会、水曜日は恵比寿で京都から上京してきた友人を囲んでの食事会、木曜日は東銀座でハンセン病がらみの集まり。引きこもりが基本…

そんな感覚・会話・瞬間

『エドナ・ウェブスターへの贈り物』(ブローティガン)を眺める。読むのではない、眺めたり、触ったり、さすったり、転がしたり、見つめたり、まさぐったりする。言葉は必ずしも読まなくてもいいじゃないかと、ブローティガンの言葉を眺めながら思う。ぼく…

深呼吸の日

朝から歯科でがりがり。治療後は鎮痛剤なしではいられぬ激痛。それでも、いざ鎌倉! 鎌倉駅から5番乗り場ハイランド行きのバスに乗り、浄明寺前で降りたら、浄妙寺内のこじゃれた店で石窯で焼いたパン付きのランチを食べて、まったり。次は江ノ電に乗って江…

本の島

本日は午後1時より青山ブックセンター本店で行なわれた「本の島」VOL1に行ってきた。管啓次郎さん、鄭瑛恵さん、野崎歓さんが、『本の島』の構想を残して亡くなった編集者津田新吾さんをめぐって語り合った。その語りをみなで共有しつつ、本は如何にして…

記憶

取材テープ起こしと翻訳の合間の気分転換に、再び横浜・黄金町シネマ・ジャックに映画を観に行く。原一男監督『ゆきゆきて、神軍』。二十数年前の公開時に一度観ている。しかし、今回あらためて観てみれば、見事なほどに内容を忘れている。初めて観るような…

小野十三郎 メモ

メモ。詩に於てはリズム(情緒)の性質を変え得ない思想の力など存在しない。 詩に於ては、容易に情緒化されて一定の音数律(例えば三十一音字型というような)に乗り得るような思想は思想でもなんでもない。言葉に新しい感覚と生命を与えること、これが詩人…

原点?

いい人、普通の人について、考えなくてはいけないと、ふと思った。 岡山県立邑久高等学校新良田分校は、世界で唯一のハンセン病療養所内に設立された高校だという。ここには日本全国の療養所から社会復帰の希望を胸に少年少女がやってきた。しかし、たとえ病…

帰京

瀬戸内ハンセン病市民学会交流集会終了。知人らと岡山駅で別れたあと、私はひとり岡山市内の温泉へ。宇野バス四御神線に乗り、浄土寺前で降り、湯迫温泉へ。張りつめて眠れなかったこの三日間の緊張を解く。なにしろ月曜日の夕方だから、温泉はがらがら。台…

おでかけ

8日〜10日で岡山。ハンセン病市民学会交流総会。長島愛生園に行く。隔離政策を一貫して主張した光田健輔が長い間園長をしていたところ。現地で久しぶりに水牛老師に再会。谺さんとも会えるはず。

初心

そもそもの、済州島へと向かうきっかけをくれた人を自由が丘に訪ねて、最近のあれこれを話してきた。もう少しはまって済州島を巡り歩こうと思うと言ったら、ぐっと眼光鋭く、「行って何をする?」。さらに「4・3事件を研究したり、取材したりする人間は掃い…

要約してはいけない。

久しぶりに、娘と、午後いっぱいまったりお茶。夕方ぽっかり空いた時間、再び黄金町シネマ・ジャックで、原一男監督ドキュメンタリー映画「極私的エロス・恋歌1974」を観る。原一男という人はカメラを持たない時には人間とどう向き合っているのだろう? 素手…

全身、表現。

昨日、つい最近パートナーを亡くした友人を訪ねてきた。表現者同士、深いところで交感し合っている二人だった。共に生きることで、お互いの人生と表現を深め合う二人だった。失ったものがあまりに大きくて、心が動きを止めてしまっている、そんな様子にかけ…

投企

参ったなぁ。腸の癒着が原因でいきなり腸閉塞になったのが一週間前で、その原因が、三年前の開腹手術にあるらしいということで、えっ、そうなの? 開腹手術すると、腸って癒着するの? って間抜けなことを言って、周囲の人々に怒られたり。で、これは開腹手…

秘密に向かう

大阪に行ってきた。用件は二つ。一つは、6月末に娘が結婚するにあたっての、結婚式打ち合わせを兼ねた両家会食。親同士もほぼ同じ年令。両家共に母親はO型、他は全員B型。B型に囲まれて生きるO型の悲哀を母親同士しみじみ語り合う。もう一つは、生野の…

つながり

二日間、草津の栗生楽生園で、詩人の谺雄二と文学談義。 谺さんに決定的な影響を与えたのは、小野十三郎なのだという。ああ、そうか、そうなのかと腑に落ちるものがある。谺さんに会う前に、大阪まで会いに行った詩人金詩鐘も小野十三郎を師と仰ぐ。 「詩は…

メモ  ライと朝鮮

日本の近代化驀進のために犠牲にさせられた二つのもの、それがライと朝鮮だ、と詩人・村松武司は繰り返し言い続けた。(森田進『魂の癒しという最大の主題 ―「ライ文学」』より)森田進著「詩とハンセン病」を読んでいる。この本を読んでよくわかったこと―ハ…

散文的世界。

書評原稿を書く。 来週末に2年ぶりに再会する谺雄二さんの詩集「ライは長い旅だから」を眺める。 荒川洋治「文学の門」を読む。 荒川さん曰く、日本で見かける文章の、九九パーセントは散文、なのだそうである。いまの日本は、散文の支配力がとても強い、の…

復讐

「詩人は言葉を大事にする、というのは一つの通念にすぎないのであって、果たして現実の詩人が、現実に言葉を大事にしているかどうか、そんなことは誰にも分からない。むしろ言葉を軽く扱ったために、その報いを彼らは受けているのではなかろうか、と私は疑…

小猿の夢

「沼地のある森を抜けて」(梨木香歩 新潮文庫)。読了。全宇宙の始まりにたったひとつだけあった細胞の、すさまじい、絶対的な孤独。そこから「物語」は生まれ、連綿と紡ぎ出されていく。「物語」を「生」に置き換えても、「死」に置き換えてもよい。そのど…

恥ずかしいこと

引きこもり生活。生身の誰とも話さず、ただ本とだけ向き合って、音楽に耳を傾けて、一日が終る。最近、一週間のうち五日はそんな感じ、それが心地よくもある。生きるためには、生きるためにこそ、語りえぬことが人にはある。語りえぬことだからといって、そ…

島から島へ。

本日より、友人の結婚式出席のために、3日間、熊本。久しぶりに、石垣島のナミイおばあや水牛老師とも再会する。熊本で行なわれる披露宴の場で、八重山の歌を聴けるという、嬉しさ。 李静和『つぶやきの政治思想』とサローヤン『The human comedy』のpaperba…

済州島で出会った詩

済州島で詩人 許栄善(ホ・ヨンソン)さんと知り合った。彼女が四・三事件の記憶のあとを連れ歩いてくれた。四・三の記憶を言葉にしていくことの痛みと苦悩を聞いた。彼女の詩を翻訳しようとして、その痛切な心と言葉を日本語に置き換えることの難しさに呻吟…

それを言葉化したいねん

金時鐘詩集『失くした季節』の言葉を拾い読む。八十歳の詩人の疾風怒濤の言葉。 テロも行き会えないから 人だけが ただ死ぬ。 せめてすれ違えたなら 俺こそが テロリストだ。 (金時鐘「蒼いテロリスト」第一連) 言葉がそこらで降り敷いています。 耳をそば…

イヤダカラ、イヤダ

本日は神保町にて「ヨミ会」。「阿房列車」を読んでいたら、内田百輭が台湾でキョン(百輭曰く、痩せた猫くらいの小さな鹿)を欲しくなったということを書いていて、ツボにはまる。『がきデカ』の「八丈島のキョン!」を思い出して、「イヤダカラ、イヤダ」…

私には分からないのです

済州島の民謡の名唱 コ・ソンウクさんからいただいた済州民謡のCDを聴く。島の響き。韓国語の響きの中から、八重山で聴いたユンタのような響きが立ちのぼってくる。 なんだか、懐かしいと聴くうちに、いきなり虚をつかれたのが、「行喪歌」(弔いの葬列の…

空白で、つながる

済州島4・3事件 (1948年4月3日〜1954年9月21日) 軍・警察・極右青年団によって虐殺された人々は2万5千〜3万名。 つい最近まで、済州国際空港滑走路脇の土中にも、数多くの犠牲者が埋められたままだった。 語りえぬ記憶とともに埋められた死者の魂を慰め…

イオド(イオ島)、あるいは常世の島、もしくはパイパティロマ

済州島に廃校を利用したギャラリーがある。キム・ヨンガプという写真家の写真だけが展示されているギャラリー。韓国本土から島にやってきて、ひとり山を歩き、海を眺め、光を待ち、一日に一枚、島を撮りつづけ、やがて病に倒れて、この世を去ったのだという…

島へ行く。

詩は書くものではない。そうあるべきものなのだ。 by 金時鐘明日から済州島。この数年間の島伝いの旅のつづき。

マイソング

一日の終わりに、「カシナム(茨)」という韓国の歌を思い出す。折に触れ、口ずさむ歌。韓国語で、「ネソゲン ネガ ノムド マナソ タンシヌン スィルコッ オムネ」と歌いだす。初めて、その歌詞を聴いたときに、ああ、これは私の歌だと思った。以下、訳詞。 …