2009-01-01から1年間の記事一覧

星と※

少し太宰づいて「斜陽」を再読。やっぱりうまいな、太宰、やんなっちゃうな。その昔、もう三十年以上前、NHKで「斜陽」をドラマ化して、かずこ役を八千草薫が、作家の上原役を木村功が演じたのを見た記憶がある。以来、かずこと八千草薫が重なっていたのだが…

模様替え

収納しきれなくなってあふれ出たモノをなんとか収納しようと、転倒防止ツッパリ棒付のスチールラック導入。これつまり、ツッパリ棒のおかげで、うまいことすれば、天井までギリギリ収納できるのがミソ。で、昨日の午後に、今まで衣類や雑貨を収納していたケ…

かったい道

ふと「かったい道」のことを思い出して、『日本的思考の原型』(高取正男 平凡社ライブラリー)を読み返す。「かったい道」とは人知れず、癩者が旅する隠れ道。「この世と交わるのを拒絶された人たちが、死ぬまでまわりつづける道」。宮本常一の『忘れられた…

ものに狂うてみしょうぞ

「この者を、一引き引いたは、千僧供養、二引き引いたは、万僧供養」と、書き添えされた土車に乗せられたるは、餓鬼阿弥陀仏、その正体は閻魔大王の計らいで地獄からよみがえった小栗判官。 その土車を、餓鬼阿弥陀仏が夫・小栗と気づかぬ照手姫が、心は、も…

実存的

微熱。ひとりの人間の内側に相矛盾するAとBという心情、もしくは行動がある。その矛盾に立ち向かうときの3つの作法。(いや、もっと多いかもしれないが、とりあえず、ざっくりと3つ)。 1.AとB、どちらか理解できるほう、言語化できるほう、つまり、扱い…

オーバーヒート

江戸川乱歩を久しぶりに読み返し、思いもよらぬことに、生理的に拒否感を覚える。いったい、どうしたことだろう? 語り口がどうも肌に馴染まない……。庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」、なにげに読み始めて、甘ちゃんお坊ちゃん風のやけに言い訳の多い語り口…

蓮葉の上の宇宙的妄想

『一千一秒物語』稲垣足穂 前世の記憶のようにかすかで曖昧で、でも忘れかねる、確かにこんなことがあったよ……、というような感覚にさせられるショートショートの連なり。いや、これは来世の記憶なのかな。前世の自分が見た夢のなかの来世の自分が見ている夢…

つづける

「おれひとりが人間で、ほかのものがすべて神なんだ」 ベケット 安部公房『燃えつきた地図』を読む。この空気、どこかで吸ったことがあると思いつつ、読み進めるうちに、ああ、これはオースター、と不意に気づく。 失踪した男、失踪した男を探す男、探す男は…

そろそろ……

『反=近代文学史』(中条省平 文芸春秋)を読む。 漱石の『こころ』を内面の特権化を極限にまで突き詰めた作品とし、ここに現われ出た内面の特権化の傾向が日本の近代文学をある部分でやせ細らせたのではないかという疑問を出発点に、中条省平は、『こころ…

偏屈

『ひそやかな歌声 ―島とおばあとハンセン病と―』。7月5日より熊本日日新聞でスタートの短期連載のタイトル。毎日曜掲載、全6回。5月に訪れた鹿児島鹿屋の星塚敬愛園でのハンセン病市民学会交流集会の体験がもとになっている。あのときに感じた予定調和の…

他者のことば

昨日は、1日、映画ファン感謝デー、ということで、原稿行き詰まり打開(?)のために、『愛を読むひと』を渋谷で観てきた。ケイト・ウィンスレットがあんなに上手いとは思わなかった。 本を読むということ、本を聴くということ、声を行き交わすということ、…

もやもや

『大人にわからない日本文学史』(高橋源一郎 岩波書店)を5日目まで読む。(7日目まである)。『時代閉塞の現状』を書いた啄木と『「丸山真男」をひっぱたきたい―三一歳、フリーター。希望は戦争。」を書いた赤木智弘を重ね合わせて論じるところなんかは…

強情なえび

ストレスがたまると、やたらに本を買ったり借りたり、とてもじゃないが読みきれないほど本を積み上げて途方に暮れる。 国書刊行会の日本幻想文学集成の室生犀星の巻は矢川澄子編で、「蜜のあはれ」に始まって、魚尽くしのラインナップで、締めは「老いたるえ…

胸が震える。

昨夜は若い友人の48と、お台場のZEPP東京での<くるり>のライブに行く。2時間半のスタンディング。腰が痛い。くるりはCDで聴くよりもライブが格段によい。ポップな作りこみをしている曲より、ロック魂炸裂の曲のほうがずっとよい。ドラム、ベースの重低…

願い

開高健の『人とこの世界』(ちくま文庫)を読み始める。しょっぱなから面白すぎる。広津和郎との座談と、それにまつわる開高の独り言を書き綴った「行動する怠惰」、これを読んだら、「不精者で、万年床が好きで、あまり本を読まず、小説を書くのがおっくう…

fool on the hill

昨夜は日本橋で文学少年少女組の宴。少年たちは、たどり着けない、安部公房的、「わが心の地平線」の彼方を見つめて語り続ける。少女たちは、読み終わった瞬間に幻と消えて何が語られていたのかまるで思い出せない空虚な「小説」群について、あーだこーだ。…

イリオモテ

昨日、岩波書店より発売になった、二年ぶりの拙著。 「この世界は無数の島でできている。 人みな島に生まれて、島から島へと旅をしながら歌いながら生きていく」。 と、↑は、本の帯に抜き出された本文中の言葉。答えのないことをのらりくらり書いている。の…

微熱のむじな

自分の体のことに疎い。寒いのか、寒気がするのか、しかと分かるまでに時間がかかる。そもそも昨夜は寒かったのか、寒気がしたのか、いずれにせよ、本日は微熱。昨日は上野の森をそぞろ歩いていた。霧雨。美術館では「ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション…

ちがうよ、ちがうよ。

6月13日は神楽坂の日本出版クラブ会館にて、「野間宏の会」に参加。評論家の富岡幸一郎さんをコーディネーターに、、『文学よ、どこへゆく <世界文学と日本文学>』という空恐ろしいテーマのもと、奥泉光さん、佐伯一麦さん、塚原史さんとパネルディスカ…

禅問答

石垣島の水牛老師の家の本棚から埴谷雄高の本を借りてきた。 『薄明のなかの思想 宇宙論的人間論』(ちくまぶっくす)。 この広大無辺な宇宙のなかで、人間として生まれ死んでゆくとはどういうことか? そんな問いのもとに、生誕、意識、存在、愛、性、政治…

島暮らし

石垣島あやぱにモールのセクシーサー。今までの島通いでは出会うことのなかったニューフェイス。仕事をきれいさっぱり忘れて過ごす島の休日。さあ、今夜も麦の水、米の水

酔って候

きのうもおとといも今日も朝から、たぶんあしたも、島にいるかぎりは、麦の水。

糸ぬ上から 嘉例吉

絹ぬ上から 嘉例吉 一路平安 嘉例吉 嘉例吉さて、これから石垣島に向かいます。歌狂いナミイおばあ米寿のお祝い、わが師である水牛老師定年退職お祝いにかこつけて、束の間の飲んだくれ島暮らし。 ところが肝心のナミイおばあが骨折で入院中。とはいえ、この…

好きだった人

原稿を書く合間にかぼちゃを煮て、きんぴらごぼうを作って、あれが足りないこれもないと腰も軽くすぐにスーパーに買物に出て、それはつまりは原稿が行き詰まっているということで、でもね、歩くと血の巡りがよくなって、アイデアも湧く、結果的に筆は進むん…

不運な女

『不運な女』というのは、大好きなブローティガンの最後の小説のタイトル。ブローティガンが自殺したあとに遺品の中から発見された遺稿。 私はこの小説を去年の6月1日に熊本の橙書店で買って、翌日、6月2日に読み始めて、腰を抜かしてしまったのだけど、…

たっぷり!

←5月30日、亀戸のカメリアホールで催された浪曲乙女組の公演に行ってきた。 「大胆!初夏の犯行予告 神出鬼没の怪盗三姉妹」というキャッチフレーズのもと、(たぶん)キャッツアイに勝るとも劣らぬ華麗な天然ぶり発揮のお芝居と迫力の浪曲で、観客のハー…

当たり日!

もうすぐ父の命日。朝から三浦にある海の見える霊園に行く。午前9時、まずは横浜目指して東急目黒線下りに飛び乗ると、車内放送で人身事故のため菊名〜横浜間は運転休止中のアナウンス。あ"ー、乗る前に知りたかった…。武蔵小杉で南武線に乗り換えて川崎に…

言葉を開く。

「泥海」「暗い絵」「崩壊感覚」と読み、今は「わが塔はそこに立つ」を三分の一ほど読んだところ。いずれも野間宏作品。 「わが塔…」は「暗い絵」の延長線上にあり、さらに広く深く、文学の問題、性の問題、欲望と愛の問題、政治の問題、人間関係の葛藤の問…

愛があるんじゃない?

かっこよすぎるんじゃない、『五右衛門ロック』! 新宿バルトで観てきました。 http://www.goemon-rock.com/ 古田新太に惚れ直す。北大路欣也からソフトバンクお父さんイメージを振り払う。舞台役者は、テレビじゃなくて、やっぱり舞台で見たいとあらためて…

清く美しい言葉は、ねじれる。

鹿児島に作られたハンセン病療養所星塚敬愛園を、敬愛園開設当時(1935)の幹部職員のひとりは、旧約聖書の故事になぞらえて『のがれの町』と呼んだ。一般社会で迫害を受けるハンセン病者がのがれ来る場所としての療養所という意味がそこには込められている。 …