森崎和江『異族の原基』 メモ1

「非政治的基底からの共闘」(70年9月『現代の眼』所収) 閉山した筑豊の炭坑の元坑夫たちが流浪の労働者として流れ込んでいった北九州・八幡製鉄所での労働組合運動をめぐって、 北九州を拠点とする「沖縄を考える会」の活動をめぐって、 「考える会」が打…

藤野裕子『民衆暴力――一揆・暴動・虐殺の日本近代』  メモ

近代国家とは、 「ある一定の領域(中略)のなかで、レジティマシーを有する物理的な暴力行使の独占を要求する(そして、それを実行する)人間の共同体」(マックス・ウェーバー『仕事としての学問 仕事としての政治』より) 近世においては「仁政イデオロギ…

「桜の木の下で」 (溝口トヨ子ちゃんのテーマ) 5月15日トヨ子ちゃんへの祈りの大芸能祭@水俣・相思社のために

「桜の木の下で (溝口トヨ子ちゃんのテーマ)」 (「リンゴの木の下で」のメロディで) 桜の木の下で 今日もまた会いましょう たそがれ 赤い夕陽 海に沈むころに 楽しく輪になって みんなで歌いましょう 思い出す かわいいあの子 桜の木の下で

「居場所を失くしたカミサマたちの歌」

悪いことをしたらカミサマのばちがあたるというけれど、 問題はそのカミサマがどこにいるかということでして、 まだ私がタンポポの花やテントウムシくらい小さかったころに、 おばあちゃんがそう言って教えてくれたことには カミサマはどこにでもいる 山にも…

『実践 日々のアナキズム ―世界に抗う土着の秩序の作り方』(ジェームズ・C・スコット) メモ ~ちっぽけな ”ひとり” の闘いのために~

『実践 日々のアナキズム ―世界に抗う土着の秩序の作り方』(ジェームズ・C・スコット)を読んで、いろいろ楽しくなったというか、心が軽くなったと言うか。 この世界の問題があまりに大きすぎて、いったいどうしたらいいんだろかと立ちすくんだり、途方に暮…

奈良県 田原本 天理 「牛頭天王」銀座を歩いて、ふっと牛頭天王と天理教を結ぶものを妄想した。

まずは長い長い前置き、牛頭天王ツアーの記録。 本日の牛頭天王ツアーは、ここから。 ◆奈良県 田原本町 津島神社 (近鉄 田原本駅のすぐ近く) 境内右手には、池の中に厳島神社(向かって左)、金毘羅神社(右)、 豊受大神宮 その脇に「国威発揚」と記され…

森崎和江『北上幻想』 メモ

北に向かうのは、そこが荒蝦夷の地だから。と言ってしまうとあまりにざっくりしすぎか。 近代国家がそのよりどころとした建国神話において、きれいに封じ込められた「いのち」の原風景をそこに見たからと言うべきか。 北に向かう旅は、森崎和江の長きにわた…

牛頭天王、まつろわぬ神のイメージ 『牛頭天王島渡り』祭文より メモ

牛頭天王に宿を貸すことを断ったために滅ぼされる蘇民古端は釈迦の弟子で、 古端の家を襲った牛頭天王と釈迦の間で問答が繰り広げられる。 そして―――― その時釈迦仏聞こし召し、 「いかなる魔王・鬼神にてましますぞ。 仏の御弟子まで悩ます事不審なり」と宣…

牛頭天王と十一面観音 『牛頭天王島渡り」祭文より メモ

奥三河 東栄町に残る「牛頭天王島渡り」祭文のうち、 牛頭天王の子である八王子の第八番目 蛇毒気神の物語に驚かされる。 竜宮から日本へと向かう牛頭天王の一行(妻の薩迦陁女、七人の王子、8万4千の眷属ら)を赤き毒蛇が波をかきわけ追いかけてくる。 赤き…

北米黒人女性作家選③『死ぬことを考えた黒い女たちのために』 藤本和子による解説  メモ

「記憶できないほど愚かになったから書くのよね」 と、トニ・モリスンは言ったという。 同時に、また、トニ・モリスンは国でも州でもない、共同体や町についての細かいこと、雰囲気、手ざわりについて語ったという。それは黒人女性がそこで生きて、根を生や…

森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』 メモ3 

なぜ、森崎和江は、奈落の底の神々を追ったのか? 第三章の最後の項「消えない」にその問題意識、森崎和江の立ち位置ははっきりと語られている。 炭坑という奈落に生きる人びとが、共に生きた奈落の神々がいる。 坑夫たちは彼らの「やまの神」のみならず、地…

ファン・ジョンウン『続けてみます』  メモ

読み終わって、すぐに、こうやって書きながら何が語られていたのかを想い起こしてゆく、眠りにつく前、半分夢の中で読んでいた世界だから、彼らの世界もまた私の夢のような心持ちにもなる、目覚めても忘れることのない夢。 夢のなかで、私は思わず呟いている…

森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』 メモ2  内発性をめぐって。

この本はを読むのは15年ぶりで、 その15年間は私自身の旅の作法、人びとの向き合い方、生き方を 大きく変えてきた15年でもあった。 だからだろう。 まるで、初めて読む本のようにして、この本を読む。 かつて文字で追って頭で理解した(と思っていた)ことと…

森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』 メモ

<はじめに>から なぜ森崎和江は果てしなく旅をしたのか……。 「私はぬきさしならなくなっているだけである。引きかえすすべがなくなっている。」(森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』はじめに より) 思わず、「あっ」と小さな叫びをあげて、息をのんで…

小野十三郎による谷川雁と黒田喜夫。  森元斎『国道3号線』からの重引

谷川雁と云えば、すぐ私の頭に浮かぶのは黒田喜夫である。一人は北九州、一人は東北の詩人で、地理的にも対極にあった詩人だが、黒田喜夫にもあったコンミュンのイメージは、谷川君とは、対極とは云えないにしても、ちょっと存在の次元がちがっていた。黒田…

渡辺京二による石牟礼道子 「彼女の文学は庶民文学ではないのです」 

自分たちの世界に向けられた近代知識人のまなざしを否定して、逆に自分たちの生活世界から近代の正体を明らかにしてゆくところに石牟礼文学の本質があると申しましたが、その際彼女は決して被抑圧者としての民の利害や言い分を代表するという方向をとってお…

森崎和江   民族語  メモ

権力によって民族語をうちくだくことはゆるしがたい残忍さであるが、民族が言語としてよって立つ日常的伝統を、他民族のなかへ移植することも不可能なのである。私は日本語をつかいながら、そのことばのもつイメエジのほとんどを朝鮮化して用いてきた。その…

言葉   森崎和江

私たちの言葉は、まだその闇へ到達できておりません。 (『ははのくにとの幻想婚』所収「地の底のうたごえ」より) 性が単独な機能ではないのに、女の性は生誕を具象としてもち、男の性は生誕を抽象とします。困ります。なぜなら具象の力とはたいへんなもの…

森崎和江  詩をめぐって

詩とは、自然や人びととのダイアローグだと、幼い頃から思ってきました。人っていうのは、自然界の中で、鳥や、みみずや、蟻なんかと一緒に生きているわけでしょ。小さい時、私はいつも、詩や絵を描いて遊んでいたけれど、それは、天然、自然とのダイアロー…

森崎和江 産みの思想  メモ

「産み・生まれるいのち」より 死について古来人びとはさまざまに考えてきているのに、産むことについてなぜ人間は無思想なのだろうと、若い頃から疑問に思ってきました。死は個人にとって、個としての生活を完結させます。これにたいして、産むことは個に限…

森崎和江『まっくら』メモ

出発点。 <はじめに>より 私には、それとも女たちは、なぜもこうも一切合財が、髪かざりほどの意味も持たないのでしょう。 愛もことばも時間も労働も、あまりに淡々しく、遠すぎるではありませんか。なにもかもがレディ・メイドでふわふわした軽さがどこま…

キム・ヨンス『夜は歌う』  メモ

1930年代 満洲東部 北間島(現在の中国延辺朝鮮族自治州)において「民生団」事件という、朝鮮人の抗日遊撃隊の根拠地における朝鮮人同士の虐殺事件が起きた。 それがこの物語の背景。 民生団(1932年2月~10月)という見慣れない団体については、水野直樹先…

ファン・ジョンウン『野蛮なアリスさん』 メモ

2020年暮れから読み始めて、2021年元旦に読み終えた、今年最初の読了本。 いきなり、こう始まる。 私の名前はアリシア。女装ホームレスとして、四つ角に立っている。 君はどこまで来たかな。君を探して首をかしげているよ。 アリシアがいかにしてア…

2021年最初に観た映画は、小森はるか監督『空に聞く』

youtu.be やはり小森はるかは「座敷わらし」なのだな、と思いつつ、スクリーンの中の人々の声に聞き入った。 (前作『息の跡』を観た時にそう思った。) 聞き手(小森)には、ことさらに聞こうとする気配がない、ただそこにいる。 聞き手は、ことさらに「聞…

映画『Cu-bop across the border』を観た。

youtu.be <映画を観た直後に友人に送った、ちょっと興奮気味の手紙> CU-BOP、本当に面白かった! ちょうど、ほんの数日前に、いわゆるK-POPと韓国の伝統芸能(放浪芸)の歌と語りの違いという話を韓国のパンソリの唱者とやっていて、 どんなにK-POPがかっ…

見えるものから<見えない世界>を探る技法

という話を、先日、オンラインで聴いた。 講師は佛教大学の斎藤英喜先生。いざなぎ流の研究者。 見えるものから<見えない世界>を探ると言えば、まずは占いだろう。 そこで、陰陽師が登場する。 「平安朝中期の王朝社会において、天体から発せられる災いの…

『パンデミック下の書店と教室』メモ

新自由主義、排外主義、過剰な民族主義、つまり右派ポピュリズムの広がりの中で、 「決して心地よいものではない共生」を考えるということ。 経済的に分断され、イデオロギー的に二極化していく世界の中で、かよわき者、声なき者、排除される側、差別される…

『女たちの同時代 北米黒人女性作家選② 獅子よ藁を食め』 メモ

森崎和江 解説を読む。 1981年11月初版の本だから、森崎さんもこの解説文をおよそ40年前に書いている。 1927年生まれの森崎さんが、54歳のときの文章。 日本人であるわたしたちには、ほんとうのところ、アベバもアンジェラも聴きとれないのかもしれない。そ…

リンギス『何も共有していない者たちの共同体』  メモ

■「もう一つの共同体」より 共同体は、人が自分自身を裸の人間、困窮した人間、見捨てられた人間、死にゆく人間に曝すときに、形づくられる。人は、自分自身と自分の力を主張することによってではなく、力の浪費、すなわち犠牲にみずからを曝すことによって…

瀬尾夏美「押入れは洞窟」 メモ

まず、一人の語り手がいる、この語り手が「場」を仕切っている。 「語り手」は、いつも押入れの中にいた「彼」と、「彼」が亡くなるまでの、「彼」の家族の来し方を、最初に語る。プロローグ。 「彼」は事故で障害を負い、亡くなるまでずっと、ほぼことばを…